博多人形いとう | 日本の伝統工芸品「博多人形」

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「ファンファン福岡」で取材を受けました。

西日本新聞社の運営による、魅力あふれる福岡の街と人をご紹介するサイト「ファンファン福岡」にて取材を受けました。ご一読いただきましたら幸いです。

自分の心を映し、 人と人との縁も結ぶ 博多人形の世界
博多人形いとう 中津井 正宏さん

 

「博多人形」という言葉から何を思い浮かべますか?

 

「実家に着物姿の人形があったねー」 「捨てずに捨てられず床の間に置いてある」 「あまり特長ないよね」

あらら、もしかして博多人形の奥深い魅力に気づいておられないのでは?

福岡の人ならあまりに身近過ぎて、その価値に目を向けたことがないのかも。

「博多人形いとう」の扉を叩くまでは、実は私もそうでした。

 

もう一度、博多人形の魅力を掘り下げたい。

 

福岡市早良区、表通りから住宅街へ続く細い道を入った「飯倉公園」の前に、「博多人形いとう」の看板をやっと探しあてた。

博多人形いとうは、飯倉公園の向かい側にある。この看板が目印

博多人形いとうは、飯倉公園の向かい側にある。この看板が目印

こんにちはと声をかけると、出迎えてくれたのは社長の中津井正宏さん。

さあ、どうぞ店内へと促され、背の高さより高く積まれたコンテナの間を進むと、ショールームには、何百体もの博多人形が並んでいた。

卸問屋さんらしい入り口を抜けてショールームへ

卸問屋さんらしい入り口を抜けてショールームへ

 

まるで博多人形ミュージアムのようなショールーム

まるで博多人形ミュージアムのようなショールーム

その様子はまるで博多人形ミュージアム。華やかで、何かにぎやか!

 

圧倒されながらも、「すみません。私、民芸や郷土玩具には興味があるんですが、博多人形は今まできちんと観たことがなくて…」と正直に切り出した。

すると、中津井さん、ニコニコしながらこう言われる。「いいんですよ。私、今日人形買うつもりじゃなかったのになぁ…と言いながら人形に見入られる方も多いんです(笑)」

社長の中津井正宏さん

社長の中津井正宏さん

中津井さんは、デジタル最先端の大手家電メーカー勤務のあと、縁あってアナログの博多人形業界に入って18年。社長になったのは5年前とのこと。最初はここの人形たちは「商材」に見えていた。しかし博多人形と向かい合ううちに、次第に伝統工芸としての奥深さ、博多人形の持つ魅力に魅了されていったという。

 

「福岡に住んでいる私たちが、博多人形を知らない。博多人形は400年の歴史を持つ素焼きの土人形なのです。その95%は、『型もの』と呼ばれ、粘土で原型を作った後、石膏で型をとり、粘度で生地を作り、素焼きにして、彩色、面相(表情を描く)といういくつもの工程を経て完成します。博多人形師は、それらの全てを一貫して行うのです。」

国内のほとんどの土人形は、二枚型だが、博多人形は、手先、指先などの細かなパーツは、別の型で作り、溶かした粘度で接着する。だからこそ、細部まで繊細な表現が可能なのだ。作品にもよるが、1体作るのに数ヶ月かかるものも少なくないのだという。

県内には50名ほどの伝統工芸師がおり、作風もそれぞれに違う。博多人形というと、着物姿の女性をかたどった美人物、子どもをモチーフにした童物、福岡ゆかりの黒田武士などを連想するが、実は他にも多種多様な人形があるのだ。

しかし、高度経済成長期、ちょうど東海道新幹線が開通した頃からバブル時代にかけて、博多人形が土産物や贈答品として売れに売れ、大衆受けする無難なもの、ぱっと見て見栄えのいいもの、量産しやすい形のものばかりが作られるようになった。その結果、「ギフトとして贈られた博多人形は、床の間の隅で忘れ去られてしまった。伝統の重みも職人の思いも、どこか端の方に追いやられていったのではないか」と中津井さんは言う。

 

ともに旅して気づいた 人形の癒しの力

 

では博多人形の魅力をどう伝えていけばいいのか?模索する日々が続いた。

そして、小売店に卸すだけではなく、自らが選んだ人形を持ち、自分自身が博多人形の語り部となって、作家の思いや人形の特長を伝えながら対面で売りたいと、

全国各地の「福岡物産展」に出向くようになった。博多人形とともに旅をするようになったのである。

 

「通りかかったらこの人形から目が離せなくなって…」 「私、人形なんか好きじゃなかったのに…」 と足を止めて買っていく人や、

人形を眺めていたかと思えば、ボロボロと涙を流す人にも何人も出会った。

「博多人形を買って、眺めていると、今まで日常では忘れていたゆったりとした時間ができました。それは自分を見つめ直す時間です」

と、御礼を言いに再度売り場を訪れてくれる人。毎年毎年、百貨店の催事に足を運んでくれ、そのうちに、息子を連れてきたり、孫を抱いて来るようになった人。

 

「人形は、江戸時代、明治時代には、ある意味神聖なものであったと思います。節句の人形にしても、縁起物にしても、人々の祈りや願いを受け止めるものだった。それは今も変わらない。だからこそ、人形を買うときに、損得を考える人はあまりいないように思います。そして、お客様の多くが、『人形って、こんなに心が落ち着くものなんですね』と言われる。今も、祈りの対象であったり、自分の心を映す鏡であったり、慌ただしい日常の中から、ふっと私達を解き放ち、なぐさめてくれるような、そんな存在ではないかと思うようになりました。そして私自身も、博多人形を通じて人間らしさを取り戻せたような気がします。人の縁の不思議や、心の通い合いを何よりも大切にするようになりました。」

 

中津井さんを介して 出会った博多人形たち

 

「私にも、いくつかおすすめの人形を見せていただけませんか?」と相談すると、中津井さんは、店の奥から数体の人形を持ってきてくれた。

最初に出てきたのは、 天神雛

戸畑茂四郎作 「天神雛」

戸畑茂四郎作 「天神雛」

牛乗りの天神様の人形は見たことがあるが、お雛さまが乗っているのははじめて。

手のひらに乗るくらいの大きさだが、淡い彩色の美しさ、牛や男雛、女雛の表情は素朴で、心をほっと和ませてくれる。

「これは戸畑茂四郎さんの作です。昔ながらの博多人形にこだわる人で、化学顔料を使わず、薄墨、泥絵の具、色絵の具で彩色をしているので、下地の白が透けて見えています。」

「これが、昔ながらの博多人形…。ああ、イメージが全然違っていました」と思わず声をあげた。

 

次にでてきたのは、博多人形いとうが企画したオリジナル人形、縁起物のお福さんが、3人並んでお辞儀をしていく「 三福三 」。

博多人形いとうのオリジナル 「三福三」

博多人形いとうのオリジナル 「三福三」

「縁起の良い『おかめ(おたふく)』をモチーフにし、福岡という地名にもちなんだ『お福さん』です。右からも左からもたくさん福を呼ぶように、三福三と名づけました。各地にある福助人形などは、お辞儀をしているものには顔がないものもありますが、ほら、裏返すとこのお福さんには、ちゃんと顔が描いてあるでしょう。博多人形の職人さんは、見えないところまで、しっかりと柄を入れる、ていねいな仕事をされる方が多いんですよ」

 

さらに、同じく福を呼ぶ『福女』。

戸畑茂四郎作 「福女」

戸畑茂四郎作 「福女」

これも、戸畑茂四郎作とのこと。その圧倒的な存在感は、買ってきたその日から、家の守り神になれそうな風格が漂う。

「毎日、会社から帰ってきたら、悩みを打ち明けたりしてしまいそうですね。」と一緒に眺めていた若い友人がささやいた。

 

その友人が「ちょっと泣きそうになりました。」と言いつつ眺めていたのが、色紙とともに売られていた梶原正二作『人の心の奥に』だった。

梶原正二作 「人の心の奥に」

梶原正二作 「人の心の奥に」

「彼は自由な発想で絶えず新しい造形に挑戦してきた人です。この作品を見て、泣き出してしまったお客さんがおられました。

自分の心の中の葛藤を映しているようだと…。聞けば、親御さんの介護をされているといことでした。」と中津井さんが話すと、友人も小さく頷いた。

 

「人形を見てこう感じてほしい、というような決まり事はないんです。お客様の数だけ、感じ方はあって、そして50人の伝統工芸師が魂を込めて作った作品の中に、

きっとあなたの心を映したり、支えてくれるものがある。そんな人形との出会いを、私はこれからも仲立ちしていきたいんです」と中津井さんは言う。

社長の中津井正宏さん

社長の中津井正宏さん

「まずはどうぞ気軽にお店に見においでください。各地の催事や物産展にも足を運んでおりますので、

ネットショッピングもありますけれど、ぜひ博多人形の実物にふれ、向かい合ってみてほしい。

そこで、ビビっときたら、それがあなたとその博多人形とのご縁、出会いなんじゃないかと思います。」

(フリー記者 森千鶴子)


 

博多人形を買いにいきましょう。

 

この記事を読んで、博多人形に興味を持ったら、まずは最初のお気に入りを見つけてみたいもの。

博多人形初心者のための博多人形お買い物Q&A

Qどこで買ったらいいの?

A専門店や百貨店催事等で買えます。

①専門店で買う

福岡市内にある博多人形の専門店は7軒ほど。人形師さんは工房での直売はしていない方が多いので、専門店で購入しましょう。中津井さんのお店「博多人形いとう」でも購入できます。催事等で不在のこともあるので、電話をしてからでかけましょう。

②百貨店などの催事で買う

福岡県外の方で、実物を見て買いたい方は、全国の百貨店での催事や物産展に行ってみましょう。買わずにお話をきくだけでも、博多人形との距離がぐんと近づきます。

Q価格はいくらくらい?

A作品によって違います。

博多人形の価格は、1000円以下のものから数十万円のものまで、製法や製作工程、人形師などによって異なります。ものの大小によって決まるというわけではありません。価格の差などについても疑問に思ったら気軽に尋ねてみましょう。きちんと説明してもらえるお店で購入するといいですよ。

Q人形は、人形ケースに入れて飾った方がいいのですか?

Aケースにこだわる必要はありません。

人形ケースは、ホコリを防ぐ等の利点はありますが、場所を取るというデメリットも。雛人形など節句の人形は、ケースに入れると、しまいにくい。しまいにくいと、出しにくくなって、だんだん飾らなくなるということもあるようです。リビングでも寝室でも、お気に入りの場所に気負わずに、そのまま飾ってみましょう。

Q割れたり傷ついたらと思うと心配です。

A博多人形は修理もできます。

中津井さんのお店では、人形の修理も受け付けています。手や首がとれてしまった。古くて顔が黒ずんでいるなど、あきらめずに相談してみましょう。

人形師の熟練の技で、できる限り修復をしてもらえるそうです。修理の日数や修理費は、人形の状態によって異なります。

Q結婚式の引出物や、催しの記念品に、オリジナルの博多人形が作りたい。

Aオーダーメイドも可能です。

博多人形いとうでは、1体から製作してくれます。注文後、発送まで通常30~40日を予定していますが、12月~3月期間中のご注文の場合、2ヶ月ほどかかる場合があります。こんな風にしたい。というイメージ写真があれば、郵送するか持参すれば、よりイメージに近く仕上がります。

 

ステキな博多人形との出会いがありますように!